「指の関節が腫れてこぶのように固くなる」「指先が変形して痛い」——これはへバーデン結節やブシャール結節の典型的な症状です。中高年女性に特に多いこの病気について、原因・症状・治療法を整形外科医が詳しく解説します。
へバーデン結節・ブシャール結節とは?
へバーデン結節(Heberden’s node)は指先の関節(DIP関節)に起こる変形性関節症で、ブシャール結節(Bouchard’s node)は第2関節(PIP関節)に発生するものです。 いずれも指の関節にこぶのような膨らみや変形、痛みを伴い、特に40歳以降の女性に多く見られます。
関節リウマチと違い全身性の炎症は伴わず、進行は比較的ゆっくりですが、変形が強いと日常生活で不便を感じることも少なくありません。
原因と病態
変形性関節症の一種
へバーデン結節・ブシャール結節は指の変形性関節症(OA)に分類されます。 軟骨がすり減り、関節に炎症が起こり、やがて骨が増殖して結節(こぶ状の膨らみ)を形成します。
リスク因子
- 女性ホルモンの変動(更年期以降で発症リスクが上昇)
- 遺伝的要因(家族に同じ病気があると発症しやすい)
- 手の酷使(手仕事、ピアノ、家事など)
- 年齢(加齢による軟骨の変性)
特に女性ホルモンの影響は大きく、更年期を境に急増します。 海外の疫学研究では40代後半から60代女性の約20〜30%にみられるとされています。
症状の特徴
- 指先や第2関節の腫れや痛み
- こぶのような硬い結節が出現
- 関節の変形や指の曲がり
- 進行すると関節の可動域制限や違和感
急性期には炎症で赤みや熱感を伴うことがあります。 痛みは数か月〜1年程度で軽快することもありますが、変形自体は残存します。
診断
臨床診断
指の特徴的な結節と変形から診断は比較的容易です。 関節リウマチや痛風などとの鑑別も重要です。
画像検査
- レントゲン:関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨硬化像
- エコー:滑膜炎や軟骨の評価に有用
治療法
保存療法
- 痛み止め(NSAIDs)や外用薬
- 装具療法(関節を安静に保つためのテーピングやサポーター)
- 温熱療法やリハビリ
多くの場合は保存療法でコントロールが可能です。
注射療法
痛みが強い場合、関節内にステロイド注射を行うこともあります。
手術療法
強い痛みや変形で生活に支障がある場合、DIP/PIP関節固定術が行われます。 関節を固定することで痛みを軽減し、機能を維持する方法です。
日常生活での工夫と予防
- 手指のストレッチや軽い体操を取り入れる
- 冷えを避けて血流を保つ
- 手に負担をかけすぎない(長時間の細かい作業を避ける)
- 痛みがあるときは安静と温熱療法
病気の進行を完全に防ぐことは難しいですが、生活習慣の工夫で症状を和らげることができます。
まとめ
- へバーデン結節・ブシャール結節は中高年女性に多い指の変形性関節症
- 指の関節に結節(こぶ)や変形、痛みを生じる
- 保存療法でのコントロールが基本だが、重症例では手術も選択肢
- 早めの整形外科受診と日常生活での工夫が大切
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参考文献
- 日本整形外科学会「変形性関節症」公式サイト
- Haugen IK, et al. Hand osteoarthritis in women: prevalence and risk factors. Arthritis Care Res. 2011.
- Kalichman L, et al. Risk factors for development of hand osteoarthritis: a review. Ann Rheum Dis. 2010.
- Yoshida A, et al. Clinical features and treatment of Heberden’s and Bouchard’s nodes. Mod Rheumatol. 2016.
※本記事は一般的な医療情報を提供するものです。症状には個人差があるため、痛みや変形が気になる方は整形外科を受診してください。
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