「朝、手がこわばる」「指の関節が腫れて痛む」——これは関節リウマチの典型的な症状です。自己免疫が関与する慢性関節炎で、特に女性に多くみられます。放置すると関節破壊や変形に進行するため、早期診断・早期治療が非常に重要です。本記事では、原因、症状、検査、最新の治療法について詳しく解説します。
関節リウマチとは?
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は自己免疫疾患のひとつで、 本来は外敵から体を守る免疫が誤って自分の関節を攻撃し、慢性的な炎症を起こす病気です。
日本では約60〜70万人が罹患しており、特に30〜50代の女性に多く、男性の約3〜4倍と報告されています。
原因と病態
関節リウマチの明確な原因は不明ですが、以下の因子が関与すると考えられています。
- 免疫異常:自己免疫の暴走により滑膜(関節を覆う膜)に炎症が起こる
- 遺伝的要因:HLA-DR4など特定の遺伝子がリスクを高める
- 環境要因:喫煙、感染症、女性ホルモンの変動
炎症が続くと滑膜が増殖し、軟骨や骨が破壊され、最終的には関節の変形・機能障害につながります。
症状
初期症状
- 朝のこわばりが30分以上続く
- 手指・手首・足指の関節の腫れと痛み
- 疲労感、微熱
進行すると
- 手指の関節変形(スワンネック変形、ボタンホール変形)
- 手首や肘、膝などの大関節にも炎症が拡大
- 日常生活動作(食事、着替え、歩行)に支障
検査と診断
関節リウマチは早期診断が非常に重要です。診断には臨床症状と検査所見を総合して判断します。
血液検査
- リウマトイド因子(RF):約70〜80%の患者で陽性
- 抗CCP抗体:RAに特異度が高く、早期診断に有用
- 炎症反応(CRP・赤沈):活動性の指標
- 貧血や肝腎機能:薬物治療のモニタリングにも必要
画像検査
- レントゲン:骨びらん(関節破壊)の有無を確認
- 超音波(エコー):関節滑膜の炎症を早期に捉える
- MRI:滑膜炎や骨びらんの早期発見に有効
診断基準
ACR/EULAR(米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会)の分類基準が用いられます。 抗CCP抗体や関節の数、炎症反応、罹病期間をスコア化し、一定以上で診断されます。
治療法
関節リウマチ治療の基本方針は早期から強力に炎症を抑え、関節破壊を防ぐことです。
薬物療法
- メトトレキサート(MTX):第一選択薬。週1回内服し、炎症を抑制
- 生物学的製剤(抗TNF抗体、抗IL-6受容体抗体など):強力な抗炎症作用
- JAK阻害薬:分子標的薬として近年注目。内服で効果が高い
- ステロイド:短期間で炎症を抑える補助的治療
- NSAIDs:痛みの軽減に用いるが、病気の進行は抑えない
リハビリ・保存療法
- 関節の安静と適度な運動(ストレッチ・筋力維持)
- 装具療法で関節を保護
- 温熱療法で血流改善
手術療法
薬物治療でコントロールできない場合は滑膜切除術・人工関節置換術が検討されます。
近年の薬物療法の進歩で手術が必要となるケースは減少しましたが、進行例では依然として重要な選択肢です。
予後と日常生活の工夫
適切な薬物療法により、現在では多くの患者が寛解(症状がほぼ消える状態)を目指せるようになっています。
- 定期的な通院で治療効果と副作用をチェック
- 禁煙、バランスの良い食生活、十分な睡眠
- 関節に負担をかけすぎない工夫(補助具の活用など)
まとめ
- 関節リウマチは自己免疫による慢性関節炎で女性に多い
- 早期の抗CCP抗体検査やエコー検査が診断の鍵
- 治療はメトトレキサート、生物学的製剤、JAK阻害薬が中心
- 早期診断・早期治療で寛解も可能になっている
関連記事(内部リンク)
参考文献
- 日本リウマチ学会「関節リウマチ診療ガイドライン2020」
- Smolen JS, et al. Rheumatoid arthritis. Lancet. 2016.
- Aletaha D, et al. 2010 Rheumatoid arthritis classification criteria: an ACR/EULAR collaborative initiative. Arthritis Rheum. 2010.
- Singh JA, et al. 2016 American College of Rheumatology guideline for the treatment of rheumatoid arthritis. Arthritis Rheumatol. 2016.
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。治療は個々の病状により異なりますので、必ずリウマチ専門医にご相談ください。
コメント