はじめに|その足裏の痛み、見過ごしていませんか?
「朝起きたら足裏がズキッと痛む…」
「歩くときにかかとや指のつけ根がジンジンする…」
そんな経験、誰しも一度はあるかもしれません。
しかし、その痛みが数日以上続く、または繰り返すようなら要注意。足の裏の痛みには、足底腱膜炎、モートン病、有痛性外脛骨障害など、専門的な治療が必要な疾患が潜んでいる可能性があります。
本記事では、整形外科医の視点から、足の裏の痛みの代表的な疾患、診断方法、治療、そして自宅でできるセルフケアについて、文献的根拠を交えて詳しく解説します。
足の裏の痛み|3つの代表的な疾患とは?
1. 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)
- 特徴:朝起きて最初の一歩が特に痛い/かかとの内側から土踏まずにかけて痛む/ランナーや長時間立ち仕事の人に多い
- 原因:足底腱膜への繰り返しの負荷や炎症、偏平足やハイアーチなどが関与
- 参考文献:Wearing SC, et al. Plantar fasciitis: Physical Therapy. 2007.
2. モートン病(Morton神経腫)
- 特徴:第3〜4趾の間に焼けるような痛みやしびれ/歩行時や狭い靴で悪化/ハイヒールを履く女性に多い
- 原因:中足骨間の神経の慢性的な圧迫と炎症
- 参考文献:DiCaprio F, et al. Morton’s neuroma: Foot Ankle Surg. 2018.
3. 有痛性外脛骨障害(ゆうつうせいがいけいこつしょうがい)
- 特徴:内くるぶしの下あたりが腫れて痛い/スポーツをする10〜20代、特に女子に多い
- 原因:副骨である外脛骨がストレスで炎症を起こす
- 参考文献:Perdikakis E, et al. Accessory navicular: Insights Imaging. 2011.
整形外科での診断方法
- 問診・視診・触診:痛みの部位や時間帯、負荷との関係を確認
- 超音波検査:足底腱膜や神経の肥厚などを評価
- MRI検査:モートン病や骨性変化の評価に有用
詳しく解説|治療とセルフケアのポイント
◆ 足底腱膜炎
医療機関での治療:
- ふくらはぎ・足底腱膜のストレッチ指導
- インソールやナイトスプリントの装具療法
- NSAIDsやステロイド注射
- 体外衝撃波治療(ESWT)
自宅でのセルフケア:
- 朝のタオルストレッチ
- テニスボールを使った足裏マッサージ
- クッション性のある靴を選ぶ
- アキレス腱・腓腹筋のストレッチ
◆ モートン病
医療機関での治療:
- 幅広の靴の選択、インソール装着
- ステロイド+局所麻酔注射
- 重症例では神経腫切除術
自宅でのセルフケア:
- 足指ストレッチ(タオル掴み運動)
- ヒールやつま先の狭い靴を避ける
- 冷温交代浴で神経の炎症を緩和
◆ 有痛性外脛骨障害
医療機関での治療:
- スポーツの一時中止・固定療法
- 後脛骨筋のストレッチと筋トレ
- 難治例では手術(外脛骨摘出)
自宅でのセルフケア:
- 偏平足用インソールの常時使用
- アイシングを1日2〜3回実施
- ふくらはぎ〜内果周囲のストレッチ
まとめ|足の裏の痛みは“からだのSOS”
足の裏の痛みは、疲労だけでなく慢性炎症や神経・骨の異常が原因のこともあります。
以下のような症状がある方は早めに整形外科を受診しましょう。
- 2週間以上続く痛み
- 朝一番に強く出る痛み
- しびれや焼けつくような感覚
- 腫れや熱感がある
健康な足は健やかな生活の第一歩です。痛みを軽視せず、正しく向き合いましょう。
参考文献(エビデンス)
- Wearing SC, et al. Plantar fasciitis and arch shape. Phys Ther. 2007. [PMID: 17204571]
- DiCaprio F, et al. Morton’s neuroma: literature review. Foot Ankle Surg. 2018. [PMID: 29534823]
- Perdikakis E, et al. Accessory navicular bone. Insights Imaging. 2011. [PMID: 22553307]
- Gerdesmeyer L, et al. ESWT for plantar fasciitis: RCT. JAMA. 2008. [PMID: 18180466]
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