腰が痛い・足がしびれる…それ、腰部脊柱管狭窄症かもしれません

「歩いていると腰や足が痛くなって、少し休むと楽になる」「最近、長い距離を歩けなくなってきた」――このような症状は、高齢者に多く見られる『腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)』の可能性があります。
本記事では、その原因、症状、治療法、さらにはエビデンスに基づいた対処法について、わかりやすく解説します。


腰部脊柱管狭窄症とは?

脊柱管とは、背骨の中にある神経の通り道のことです。この通路が何らかの原因で狭くなると、神経が圧迫されて、痛みやしびれなどの症状が現れます。特に腰の部分でこの狭窄が起こると、下肢にまで影響が及ぶのが腰部脊柱管狭窄症です。

日本整形外科学会によると、腰部脊柱管狭窄症は60歳以上の高齢者の10人に1人が患っているとも言われており、加齢に伴う変性疾患の代表的なものです(出典:日本整形外科学会 変性疾患の疫学, 2022年)。

なぜ腰の神経が圧迫されるのか(原因)

  • 椎間板の変性:加齢により椎間板が薄くなり、周囲の骨が圧迫してくる。
  • 靱帯の肥厚:黄色靱帯という靱帯が厚くなり、脊柱管を狭める。
  • 骨の変形(骨棘):椎体の縁にトゲのような骨(骨棘)が形成されることで、神経が圧迫される。
  • すべり症の合併:椎体同士のズレによって神経が圧迫される。

これらの変化は年齢とともに進行し、特に60歳以降に多く見られるようになります。

典型的な症状(痛み・しびれ・間欠性跛行)

腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。これは:

  • 歩いていると、だんだん足の痛みやしびれが強くなり、
  • 少し前かがみになって休むと、再び歩けるようになる

といった症状です。他にも:

  • 腰や臀部の鈍痛
  • 太ももや膝、ふくらはぎのしびれ
  • 長時間の立位で症状が悪化する

などの症状が見られます。MRI検査により神経の圧迫状態を評価することができ、診断の決め手になります(出典:Katz JN, et al. JAMA, 2008)。

どんな人に多い?(好発年齢・リスクファクター)

  • 年齢:60歳以上が中心。70代に最も多い。
  • 性別:やや男性に多い。
  • 職業歴:重い荷物を運ぶ職業や、長年立ち仕事をしてきた人。
  • 既往歴:椎間板ヘルニアや脊椎すべり症の既往がある人。

また、糖尿病や動脈硬化といった慢性疾患を持つ方も、神経の血流障害が起こりやすく、症状が悪化しやすい傾向があります。

治療法:保存療法から手術まで

1. 保存療法(まずはここから)

  • 内服薬(NSAIDs、プレガバリンなど)
  • 神経ブロック(硬膜外ブロック、神経根ブロック)
  • リハビリテーション(体幹や下肢の筋力強化)

2. 手術療法(保存療法で効果がない場合)

  • 除圧術(椎弓切除術):圧迫されている部分を削る
  • 脊椎固定術:すべり症がある場合に固定する

内視鏡手術や顕微鏡手術など、低侵襲手術の普及により、術後の回復も早くなっています(出典:日本整形外科学会ガイドライン, 2021年)。

日常生活でできる予防・改善のヒント

  • 前かがみ姿勢の活用(買い物カートなど)
  • 定期的なストレッチと筋トレ(特に腹筋・背筋)
  • 体重管理
  • 禁煙・血糖管理

まとめ:早期発見・早期対応がカギ!

腰部脊柱管狭窄症は、高齢者に多く見られる神経圧迫性の疾患です。
適切な診断と治療により、日常生活の質を大きく改善することが可能です。
痛みやしびれを我慢せず、早めに整形外科を受診しましょう。


参考文献:
・日本整形外科学会「変性疾患の疫学」2022年
・Katz JN, et al. “Diagnosis and Management of Lumbar Spinal Stenosis.” JAMA, 2008
・日本整形外科学会 ガイドライン 2021年版

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